「若者自立産業」の誕生

今年からプラッツは日月と休みになり、僕も生涯初めてかもしれない連休制度の中で生活している。
なにしろ、大学を出てすぐに入った出版社では営業をやらされ、長野から広島まで1年間ほとんど休みなく出張仕事に行かされるという社会人1年目(そこは1年でやめたが)以来、普通の週休二日的人生とは縁のない生活を送ってきたものだから(00年にプラッツに入ってからも連休ではなかった、というか昨年の病気まではあまり休みがなかった)、いまの当たり前の休みが何よりもうれしい。

で、このブログ執筆も今までの「なんとしても3〜4日に1回執筆態勢」をちょっとゆるめて、自分のリフレッシュのほうを優先させている。
そんなわけで、昨日の休みはあえてブログを書かずにだらだら過ごし、今日火曜日の仕事始めにこうして書いている。

今回もサクっとまとめてみよう。
タイトルの「若者自立産業」とは、当然、〈ひきこもり/ニート/非正規雇用〉若者の自立を指し、僕は、若者の自立支援に関するジャンルが、従来の一支援分野から一産業へと拡大してきたのではないかと考えている。
一支援分野とは、たとえば不登校支援のような教育的支援ジャンル、たとえば発達障害支援のような福祉的(まあこれはかなり横断的ではあるが)支援ジャンルを指す。
若者支援は、これらの支援ジャンルという部分的側面を抱えつつ、同時に、大きく「自立産業」という側面を持ち始めたのではないかと、この頃僕は思い始めた。

それはたとえば、受験産業や老人介護産業などと比べてもいいかもしれない。それらの産業は細かく見ると、受験であれば、受験生の勉強・メンタル支援や受験校の選択などのテクニカルなアドバイス、老人介護であれば、認知症介護の新技術開発やケアマネージャーの研修等、それぞれ膨大なジャンルの専門分野に分かれていく。
だが、それら専門的な下位ジャンルをまとめるようにして、大きな上位概念として「◯◯産業」としてまとめることができる。なぜまとめられるかというと、それは簡単、そこには大きな「市場」があるから、だ。

受験にしろ老人介護にしろ、それらは単なる一教育・一福祉分野に留まらず、社会全体を巻き込むようなかたちで「産業」が形成されている。
僕はその産業の一系列のひとつとして、「若者自立産業」が形成されつつあるのでは、と思い始めた。言い換えると、それは「産業」になるほどの大きな市場規模を持っているのではないかということだ。
その市場/人口規模はどのくらいのものなのかは正確にはわからない。受験産業であれば18才以下の人口は2009年で2200万人弱だが、若者自立産業はそこまで大きくはないだろう。が、ニートやひきこもりの概算数である60万人や70万人では留まらないというのは当ブログでも何度も指摘してきた通りだ(動的ニートと静的ニート)。

現実的に社会参加していない(年金・健康保険・税金を自力で払っていない人たち)若者の数(その多くは非正規雇用あるいはニートと呼ばれている)は、僕は数百万人は存在すると考えている。
この層が自力で年金・健康保険・税金(関節税含む)を払っていくことが、すでに突入してしまった超少子高齢化社会が満たされたものになるか殺伐としたものになるかを左右する大きな鍵を握る。
年金の仕組みそのものは、数十年かけて賦課方式(現役世代が引退世代をカバー)から積立方式(同世代同士でカバー)へと徐々に移行する政策がとられていくと思うが、いずれにしろ、若者による年金・保健・税での社会参加が、社会を下支えする大きな力となることは変わりない。
要するに、若者の社会参加数が拡大すればするほど、その若者自身も含む超少子高齢化社会がポジティブなものになっていき、拡大のテンポが遅れればネガティブ要素が拡大するということだ。

そういう意味で、若者の社会参加支援は一福祉・一教育ジャンルではなくなっている。そして同時に、その規模(おそらく数百万人)からも一支援ジャンルを大きくはみ出して、巨大な社会問題となっている。
だがそれは同時に「大きな市場」がそこにあるということでもある。
大きな市場を言い換えると、それは、「産業」の誕生ということになる。つまりは、「若者自立産業」が誕生する土壌がいつのまにか形成されており、あとはそこに「命名」と「産業を実態化するシステム」が伴えばいいということでもある。

産業化そのものはよくも悪くもなく、ただそれだけの市場が形成されているということだ。
これがこのとおりだとしたら、あとは、市場実態に応じた商品の形成が必要になってくる。それは、「福祉」と「商品」の間を横断する幅広い形態となるだろう。
たとえば、非正規雇用若者を支援するサービスは、消費者である若者自身にその支援サービスに対する購買力があるため、ある程度有料になるだろう。逆に、ひきこもりアウトリーチサービスは、消費者自身に購買力がないため、無料の福祉サービスか有料(価格はどうしても採算ライン優先になる)になる。

本来であれば、アウトリーチという困難な福祉サービスほど無料に近づけ、当事者の支払能力がある自立支援サービスほど有料設定するのがフェアであるのだが、現在の日本はそのあたりが斑状に設定されていてわかりにくい。
若者サポートステーションなども、アウトリーチ/グループカウンセリング/就労支援はそれぞれ分けてサービス設定し、福祉色が強くなればなるほど(つまりはアウトリーチに近づけば近づくほど)無料化していき、顧客の支払い能力が見込まれるものはそれなりに有料化したほうが市場に活気が出て、サービス内容もより細かく豊かになると僕は思う。

今の日本は政策に行き当たりばったりなところが大きいのと、若者の自立というジャンルが有史以来市場化した経験がないため(それはどの国も同じだが)、せっかくの新市場を活かし発展させていない。
これが、受験や老人介護のように市場を発見・展開することができれば、大きな進展が始まると僕は期待する。まあ、市場とは発見せずとも自然と現れるものなので、僕の見通しが正しければ数年以内には行政のサポートを超えたさまざまな民間サービスが展開されるだろう。★