「友だち」が多すぎて〜『GANTZ』『ワンピース』、Facebook


■決断主義と『GANTZ』

この前また衝動的に『GANTZ』の最新刊(33巻)を買い、そのあまりの駄作ぶりにFacebookでも嘆息しまくったのであるが、その勢いでこのブログでも『GANTZ』について書こうと思っていた。

『GANTZ』32巻と33巻。1850万部!
Facebookではこんなことを書いた。
単にエログロ好きで絵が結構上手な作者が、「ジャンプパターン」(友情・努力・勝利)+エログロで売れたものの、これまたいつものジャンプパターンで、終わりどころ・引き際を決めることができなくて迷走している。

いつものジャンプパターンでは唐突あるいは何となく終わっていくのであるが、『GANTZ』はなぜかひたすら物語規模が拡大して(どちらかというとエロよりはグロテスクの拡大で)続いている。
この「中身はないのに続くこと」自体がかなり現代的なのではと、32・33巻を読み終わって感じたのであった。

「決断主義」の代表作といわれる『GANTZ』が終わらず延々と続くこと自体、「物語」よりも「状況ごとの人物の判断・行動」を読者は楽しんでいるのでは、と僕は思っている。
つまり、ストーリーよりもキャラのその場その場の行動(決断)を、今の読者=若者は支持しているということだ。

■登場人物の限界数

だがもうひとつ気になる点が『GANTZ』にはある。いや、最近の『ワンピース』にもこれは当てはまる。
それは、「物語を推し進める『友だち』=集団の数は何人までが限界なのか」ということだ。

最近の『GANTZ』は物語が巨大化し、ということは登場人物の数も異常に増殖してしまい、誰がタエちゃんで誰が玄野かあまりわからなくなってしまった。
どれだけ作者が絵が上手でも、これだけ物語が複雑化し場面設定がコロコロ変化すると、絵だけで人物を見分けることは難しい(『GANTZ』の映画版は少人数設定に徹しているので漫画よりもおもしろかったりする。まあ漫画も初期の少人数バージョンはおもしろかったか)。

これは『ワンピース』にもいえ、初期の主要人物があまり出てこなくなったこの前までの山場(ルフィの兄のエースが死ぬシーンを頂点とする)では、キャラクターの区別がほとんどつかなくなった。

めちゃくちゃだった話が最近は小さく
『ワンピース』は『GANTZ』と違って、超個性的なキャラの描き分けをしている、にもかかわらずだ。
これは、『GANTZ』以上にシーンの切り替えが頻繁なのと、ジャンプコミックスの版型の小ささが原因していると思われるが、根本的に、そもそも登場人物が多すぎるのだ。

■多すぎて感情移入できない

おそらく作者たちの誠実さあるいはキャラクターへの造詣の深さから、脇役も含めてきちんと描いていこうとする。
昔の漫画家、たとえば江口寿史であればすぐに投げ出すところが、最近の漫画家はわりと真面目なので、きちんと描き続ける。

そこに、読者の「決断主義」好き(「ストーリーよりもキャラ」)が重なり、異常に拡大した状況設定のもと、異常な数の人物数がそれぞれの場面でそれぞれのドラマを演じる。

一つひとつのシーンは丁寧にこまかく描き分けられている。ところが、登場人物の数が多すぎることにより、我々は、いくら物語に工夫がこなされていようが、その物語自体に感情移入できにくくなる。
作者としてはいちいち「これが玄野でこれがタエちゃんで」「これがクロコダイルでこれがエースで」とか注釈できない(作品が死んでしまう)ため、絵やセリフだけで人物を描き分けようとする。

だが、我々読者には不可能なのだ。登場人物の把握数に関して、我々にはおそらく限界がある。いくらストーリーに工夫をこらしても、ストーリーの中で捉える(認知する)ことのできる人物数には、ヒトには限界があるのではないか。

だから、最近の『ワンピース』や『GANTZ』が異常につまらないのは、作者の才能が尽きたわけではなくて、漫画=物語の限界を超えた登場人物数を提出しているためだと僕は思う。

■Facebookの「友だち」数

Facebookを研究していると、同サービスを利用する人が把握できる「友だち」の数の限界に時々言及する人がいる。それは、150人だったり30人だったりとさまざまではあるが、予想よりも少ない数しか「友だち」の日常を我々は追えないらしい。

こうした数はFacebookだけに限らず、普通の経営本なんかにも出てくる。友だちが30人あるいは150人を越えると、我々にはどうやら「それ以上」の人たちとしか認知できなくなるようなのだ。

つまりは、友だちは数じゃなくて中身ね、というベタ〜なことを僕はひきこもりやニートの若者には伝えたい。
また、これからFacebookを始める人には、友だち150人以上キープしている人は営業/仕事優先でFacebookをやってるから割りきってね〜とお伝えしたい。
もちろん僕もそうです〜。★