2012年6月24日日曜日

20年NPOを覆う「空気」


■オルタナとシェアを共存させた人

淡路プラッツは今年で20周年になるが、ここまで何とか生き延びてこられたのは、たくさんの方のご支援が一義的にはあるものの、それはなんというかやはりタテマエであって、その一番の理由は、やはり初代塾長だった故・蓮井学さんのスピリットあるいは亡霊に取り憑かれていたためだったと思う。

蓮井さんが存命中は、そのスピリットがプラッツを引っ張っていった。亡くなってからは、その意志を残された人々が引き継ぎ、そしてその意志はあるときからなぜか亡霊のようなものに変わっていった。

蓮井さんのスピリットとは、まずは「子ども・若者に寄り添い、彼ら彼女らを支援し自立させたい」ということだった。
そのためであれば、蓮井さんが若い頃は嫌いだった「権力」だろうが(そうした意味で蓮井さんは基本的には「オルタナティブ」な人だった)同業のライバルだろうが気にせずどんどんネットワークしていき、互いの情報や支援のノウハウを「シェア」していくことができた。

5月6日ブログ「「オルタナティブNPOと「シェアNPO」に書いたとおり、蓮井さんとは、オルタナティブとシェアの2つの要素を持ち合わせた稀有な人だった。

そうした蓮井さんのスピリットが、彼が亡くなってからもプラッツには綿々と引き継がれ、いい意味でも悪い意味でも、蓮井さんの90年代のエピソードや、それを一時的に引き継いだ井村良英君(現NPO育て上げネット)や金城隆一君(現NPOちゅらゆい)の話はいまだにあちこちでよく出てくる。
それもこれも、蓮井さんが持っていた、「オルタナティブでありながらシェアできる人/団体」というイメージが、ポジティブに残存しているおかげだろう。

■理念と責任

その一方で、経営的に見ると、淡路プラッツの20年の歴史はほとんどが「ボランティア系団体」の歴史だったともいえる(ここでは、理念の指標として「オルタナティブ/シェア」、経営組織の指標として「ボランティア/事業」という対比を用いている)。
10年代になり経営規模がやっと小さな会社並み(社員5名+年間契約社員数名+アルバイトたくさん)になってきたものの、その「ボランティア」系団体の本質はそれほど変わってはいない。


ボランティア系団体にはいくつかの特徴がある。
長所のひとつは、思想や価値の実現化という側面に多くあり、理念が実体化しやすいということだ(たとえば「自己決定の尊重」という理念であれば、その理念の実現を団体の行動指針の一番目に持ってくることができる)。
従業員の経済的利害が絡んでいない分、純粋に理念を現実化できる。


短所は、責任の所在が曖昧になるということだ。
同時に、責任はすべてトップに集中するため、塾長や代表は著しく疲労・摩耗する。そのため、蓮井さんは体調を崩して49才で亡くなり、僕は46才で脳出血になった(僕は無事復帰できたが)。


このボランティア系団体としての長短所(理念の純粋化と無責任体質)を持ち合わせた団体が淡路プラッツでもある。


■「空気」の形成


ここに、日本人独特の「空気」も関与している。
「空気」分析の本はたくさんあるが、最近売れている『超入門「失敗の本質」』(鈴木博毅/ダイヤモンド社)によれば、「空気」は、何よりも日本人が「和」を大切にすることから始まっている。

そうした「和」をもとに、日本人は「体験的学習(の成功体験)」を何よりも重視する(たとえば偶然にホンダのスーパーカブが売れた等)。
それと同時に「一点突破」の正論で全体を覆う(ひとつの作戦が成功すれば全体が成功すると信じる……「一点突破全面展開」)。

プラッツの場合は、理念(オルタナティブであると同時にシェア)の現実化という成功体験が組織を覆っている。同時に、ボランティア系故の無責任体質も共存する。
組織が20年続くということは、このような「空気」が形成されていくということでもある。歴史が積み上がるということは、よいことばかりでもないのだ。

■別の「空気」

東日本大震災後、日本は確実に変わってきた。多くの論者が言うように、おそらくこの150年間のうち今が第3の転換点(明治維新・敗戦に次ぎ)というのは事実だろう。
だからこそいま、NPOはその第3の転換点においてカギを握る組織だと思う。

現実に、これまで予算的にはゼロだったひきこもり関連のジャンルにまだ額は少ないもののお金がつき始めた。
ひきこもり問題とは、既存の行政組織では対応が難しい。また、ひきこもり問題は、潜在的ではあるがマイノリティの問題ではなく、社会の中心を占める問題(労働力確保の問題)だ。

だからこそ、20年続いている淡路プラッツのような団体は、そのノウハウを次世代につないでいくため時代に見合った組織に変化していく必要がある。
そのためには、別の「空気」を醸成する必要(日本の団体なので「空気」文化からは逃れられない)があり、今がその時だと思う。★




シェア型NPOの雄「育て上げネット」理事長の工藤啓さんと僕とで対談イベントを行ないます。
タイトルはズバリ、「シェアNPOとオルタナティブNPO」
6月25日(月)14〜17時、関西カウンセリングセンター 06-6881-0300
詳しくは、関西カウンセリングセンターホームページ
ご関心のある方は同センターにお問い合わせくださいね。