ネットワークではなく、NPOコラボレーション


■ネットワークとコラボレーション

オルタナティブNPOとシェアNPOというこの5月6日のブログで僕は以下のことを書いた。
現在、35才前後の団塊ジュニア世代が次々と創設するNPOはいわば「シェア型」であり、ゆるやかなつながり(ウィークタイ)のなかで情報や価値をシェアしつつ、互いに「ウィンウィン」であることを目指している。
これは、ジュニアの親世代(団塊世代)のスタイルである「オルタナティブ型」(メインストリームとは「別の」価値を提案する)とは対称的であり、この両者がいかにつながっていくかを現実的に検討することも、これからの我が国の社会のかたちを決定するだろう、と。

これら「シェア」と「オルタナティブ」は一つひとつのNPOのあり方を表す言葉だが、ここに、それらNPO同士が「つながっていくかたち」を示すことができれば、さらに一歩議論をすすめることができる。
僕は、この「つながっていくかたち」を検討する際、「ネットワーク」と「コラボレーション」というふたつのつながり方を比較検討すれば、より「いま」が理解できるのではないかと思う。

■ネットワークは空虚

ネットワークもコラボレーションもいずれも使い古された陳腐な表現ではあるが、逆にいうと、いずれの英単語も日本語として十分根づいているということでもあるから、今回のような概念比較する際には逆に使える。

どちらかというと、ネットワークのほうが外来語としては古いだろう。25年ほど前に友人の松本君と僕で「さいろ社」という出版社を起業した頃、ネットワークという言葉は大流行で、どこに取材に行っても誰に原稿を書いてもらってもそこに「ネットワーク」という言葉が踊っていた。
「市民ネットワークを形成し医療システムを監視しよう」「専門家の垣根を超えてネットワークすることが必要」等々、「締め」の言葉として必ずネットワークは登場していた。

当時僕はそうした原稿を毎日のように校正していて(さいろ社だけでははじめは食べていけなかったので大手の医療系出版社で校正のバイトもしていたがそこでも「ネットワーク」は頻出していた)、その出現の多さに辟易としていたものだ。

つまりは、「ネットワーク」はとりあえずの「締めの言葉」として登場するが、それはウィーン会議のように「踊る」ばかりで一向に現実化しない空虚な言葉だったのだ。
とりあえずネットワークと書いたり言っておけば何となくみんながその気になることができる。
けれども、何ヵ月たっても状況の厳しさは一向に変化しない。数ヵ月前のあの「ネットワークの必要性」というスローガンと熱気はどこに行ったんだ? と思いながら何かの論文を読んだり集会に行ってみると、また「ネットワーク」という言葉が踊っている……。

■コラボは利益を生む

これに対して、コラボレーションという言葉は共同作業や協働という意味で、「コラボ」という表現で00年代以降頻繁に登場するようになった。これに関しては説明は不要だろうが、例の「コラボ」という表現は、僕は個人的にはものすご〜く苦手だった。

単にちょっと恥ずかしいという意味で僕は「コラボ」には近づいていなかったのだけれども、世の中には、ミュージシャンとミュージシャン、アートとアート、商品と商品、企業と企業を「つなぐ」言葉として普通の日本語になっている。
業界・人・商品の「意外な組み合わせ」がコラボのポイントのように言われることが多いが、一番のポイントは「利益」の創出だろう。

ネットワークと違ってコラボレーションは利益を生む。その利益が互いをウィンウィンにする。ネットワークは思想的な価値を共有するが、コラボレーションは結果としての利益を共有する。
コラボレーションは、ネットワーク的な価値(思想)の共有がないことに意味がある。違う価値を有した業界・人・商品が、共通の利益(経済・広報等)を求めて一時的に集まり活動する。

■コラボという形態に複数のシェア型NPOが集まる

オルタナティブ型NPOはネットワーク好きなところが多い。逆に、シェア型NPOはおそらくこれからどんどんコラボレートしていくことだろう。
主としてオルタナNPOが集う「ネットワーク」は、基本的価値を深く共有するせいか逆に離合集散を繰り返す。そのためそれぞれのネットワークの「歴史」やエピソードが積み重なっていく。が、それは「踊る」ばかりでなかなか実質的結果につながらない。

対して、シェア型NPOが進めるであろう「コラボレーション」は、コラボという性格上それぞれ長くは続かないだろうが、利益という結果は生み出すだろう。
通常のコラボとNPOコラボが違うところは、ミッションという思想性に縛られるNPOが行なうこのコラボレーションは若干ネットワークの匂いが混入することだ。
ネットワークの匂いとは、つまりは思想性や価値ということだ。

だが僕は、こうした若干の思想・価値・社会的目的等は人をつなげる紐帯(ties)にもなると考えるので、まずコラボが先にあり、その背景にこうした「ゆるやかな価値の共有」があることはそのコラボレーションの動きを強める要素になると考える。

具体例をあげると、4つのNPO等が協働で展開するハタチ基金などはNPOコラボレーションの見本だ。
これとは性格が違うが、そういえば淡路プラッツもこれまで、委託事業の中で複数のNPO(NOLA 、フェルマータ)とニート支援を行なってきた。
またプラッツは、近々発表する予定だが、大阪府の委託事業の中で、NPOみ・らいずと協働で事業展開する予定だ。また、別の委託事業では、いくつかのNPOと「高校中退予防」事業に応募したりしている。
また、これも具体的には近々発表する予定だが、同じくNPOみ・らいずとNPOブレーンヒューマニティーとも協働して事業を行なおうと思っている。

プラッツ周辺だけでもこれだけの動きがある。結果がなかなか現れない「ネットワーク」よりは、期間限定ではあるもののしっかり結果の出る「コラボレーション」がこれからはより展開されていくだろう。
このコラボという形態に、シェア型NPOを中心とした複数のNPOが寄り集う。これからの日本社会は、期間限定の利益を目的にシェア型NPOが組織する「NPOコラボレーション」によって動かされていく局面が多くなるだろう。
現実的には、オルタナティブ型NPOもこの動きに吸収されていくと思う。★



シェア型NPOの雄「育て上げネット」理事長の工藤啓さんと僕とで対談イベントを行ないます。
タイトルはズバリ、「シェアNPOとオルタナティブNPO」
6月25日(月)14〜17時、関西カウンセリングセンター 06-6881-0300
詳しくは、関西カウンセリングセンターホームページ
ご関心のある方は同センターにお問い合わせくださいね。