ソーシャルセクターの2分類4タイプ〜目の前の課題解決型とソーシャル・アントレプレナー型


 ①目の前の課題解決型と②ソーシャル・アントレプレナー型

これまで僕は、NPOをはじめとした「ソーシャルセクター」(「社会貢献」を前提としている法人……NPO以外に一般社団法人・株式会社・社会福祉法人等)をいくつかの種類に分類してきた。
それは、このブログ(ソーシャルセクターの分類)や下記のYouTube動画で提示してきた(内容的には再掲だが、とりあえずPart1を添付する。このブログ後半にはPart2もあるhttp://toroo4ever.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html)。



その後いろいろ考えてきた結果、結局、ソーシャルセクターを下記の2分類4タイプに分けるのがいちばんわかりやすいと思い始めたので、これを決定版としてみる。

まず、ソーシャルセクターを以下の2分類に分ける。それは、

①目の前の課題解決型
②ソーシャル・アントレプレナー型

となる。
ソーシャル・アントレプレナーとは「社会起業家」のこと。ここではあえてカタカナにしている。
このようにおおまかに2つに分け、これらをさらに2つずつに分けていく。それは、


①目の前の課題解決型
 (1)委託事業タイプ行政補完タイプ
 (2)自主事業タイプ

②ソーシャル・アントレプレナー型
 (1)ベンチャータイプ
 (2)社会変革タイプ

となる。大きく、目の前の課題解決型とソーシャル・アントレプレナーの2つの分類ができ、目の前の課題解決型に委託事業タイプと自主事業タイプ、ソーシャル・アントレプレナー型にベンチャータイプと社会変革タイプがぶらさがる。

■「マネジメントより現場」


①はそれほど説明不要だろう。社会問題に向き合う任意団体は、目の前に大きな課題を抱え、向き合う理由を持っている(ひきこもり問題の解決等)。
そのためにまずは自主事業を立ち上げるが、この10年ばかりは行政の委託事業も広がり、周囲のすすめに応じてそうした委託事業も始める。

そうすると事業規模が拡大し、自主事業だけではフォローしきれなかった多くの課題と向き合うことができる。
が、同時に、対象や課題が拡大してしまい、またスタッフも多く抱えることから、当初の目的が分散し始める。

それは、a.対象の拡大化(当初の目の前の課題が拡大分散化)、b.それらをこなすために急場しのぎのスタッフ雇用という、2つのパターンで説明できる。
急拡大したソーシャルセクターは、マネジメント(主として戦略と組織)が超後手になっていき、組織内で不平不満が生じる。

一方、委託事業に頼らない法人は、a.事業規模の未発展と、b.対象者が「アッパークラス」の社会階層(自主事業の料金が支払える顧客層)に限られるという事態に悩まされる。
要するに、(1)委託事業と(2)自主事業を戦略的に混合させることが求められるのだが、いずれも日々の業務に追われてマネジメントを整えることのできないまま時間ばかりが過ぎていく。

マネジメント機能がこの①目の前の課題解決型は弱い、ということも特徴だろう。
目の前の課題解決に奔走しているうち、マネジメントが後回しになるというのもあるが、組織運営のなかで「マネジメント」が軽視されている日本の風土も関係すると思う。
また、ソーシャルセクターに入ってくる人材は、「マネジメントより現場」という人が多い、というのもその原因だろう。

■ほとんどがベンチャータイプ?

②ソーシャル・アントレプレナー型のほとんどは、(1)のベンチャータイプではないか、というのが今のところの僕の感想だ。

ちなみに、日本のNPOの8割は、ソーシャルセクターではない、ボランタリーセクターだといわれる。
残った2割がソーシャルセクター(社会貢献がビジネス化できているということ)だが、どうだろう、この2割のなかの6〜7割は①目の前の課題解決型で、残った3〜4割がこのソーシャル・アントレプレナー型ではないか。

つまり、ソーシャル・アントレプレナー型は、全NPOの1割も満たないと思う(8割がボランタリーセクターで、残った 2割中の半分以上が目の前の課題解決型)。
その10%に満たないソーシャル・アントレプレナー型のうち、ほとんどがこの「ベンチャータイプ」だと僕は見ている。

ソーシャル・アントレプレナー型ベンチャータイプは、15年前のITブーム時に起業していれば、「ソーシャル」はつかずに、ただの「アントレプレナー」だったということだ。
第二第三の楽天(ほどとは言わないがそれなりの規模の企業)になれた団体も、今のソーシャル・アントレプレナー型ベンチャータイプにはたくさんいると思われる。

それだけ優秀な人材がここには含まれると僕は思っている。これは、団塊ジュニア以降の世代に多く見られる。

■システムそのものの返還を迫る〜社会変革タイプ

では、②(2)ソーシャル・アントレプレナー型社会変革タイプと、②(1)のベンチャータイプはどう違うのだろうか。

それは一言、「法人の中核スタッフが、『社会問題を構造的に変革することで、今よりよい社会システムとなる』ということを語れるかどうか」につきると僕は考える。

この時の「社会問題の変革」とは、福祉的に「社会問題をフォローする」という意味ではなく(具体例はあまり書けないが、たとえば雇用システムそのものを変革するのではなくて、現行の雇用システムを変革することなく新アイデアで補っていくといったこと)、人口構成や社会階層構造等を射程に入れてシステムそのものの変換を迫る事業提案を行なうことだ。

こうしたシステムの根本変換から社会変革を目指し、そうしたことをシンプルに中核スタッフが語れるかどうか、このことが(1)のベンチャータイプと(2)の社会変革タイプを分ける基準だと考える。
(1)ベンチャータイプは、こうしたことを語るのが(書くのが)苦手だったりする(が、マネジメントは非常に上手)。

そういうと大げさだが、たとえば、「サードプレイス」の現実提案などはこの社会変革に当たると僕は思っている。
だから「となりカフェ」は新しい。★