2013年12月27日金曜日

「自分新聞」ドーナツトーク版2013


■自分新聞

Facebookの年末恒例のアプリに「自分新聞」というのがあって、クリックして2分ほど待っていると、その年の自分の記事からFacebookさんが適当に編集して「その人の1年」みたいな新聞が作成される。
たとえば僕であれば、今年はこんな「自分新聞」になった。


荒いファイルらしく拡大すると文字が読めない。雰囲気だけでも。
興味ある方はFacebookを利用してここ田中俊英の自分新聞をクリックしましょう〜


でも、あくまでFacebookが勝手に見繕ったものであって、おもしろいっちゃおもしろいが、「なんとなくビミョー」な感じでもある。
そこで、今年はドーナツトーク独立年でもあるし、自分で「ドーナツトーク自分新聞」を2つのブログ記事をリンクするかたちでつくってみた。

■4月 ドーナツトーク事務所開設+Yahoo!+もろもろお仕事+キックオフイベント!!

1〜3月は前職NPOの代表だったから割愛するとして、独立年最初の4月は、やはりこれだろう。
もろもろスタート!!(ちょっとタイトル変えました)

事務所開設やらそこを使っての「土曜日居場所(まのまカフェ)」やらYahoo!ブログやらたくさんあったが、実は、代表の僕と副代表(事務局長あらため)の辻田は、事務所をとにかく維持していかなければいけないので、それぞれができること(辻田であればPSW資格をいかした某自治体のスクールソーシャルワーカーのお仕事等)を「食べていくために」始めたのだった。

ここでは、これまでお付き合いのあったいくつかの法人の方々には本当にお世話になった。
あらためてあがとうございました。

■5月 大学非常勤講師を始める

人生で初めて、大学非常勤講師を始めたのが4月だったが(京都精華大学)、「こころと思想」という、社会人大学院生で臨床哲学を学んだものの専門性のあまりない僕にとっては毎週が綱渡りだったけれども、とにかく楽しかった。

100名前後常時学生さんが出席されていたことも刺激となり、古市憲寿氏を3週連続で取り上げたのをはじめ、フーコーの権力論やスピヴァクのサバルタン論、最後は鷲田清一先生の本まで好き勝手に取り上げ、好き勝手に論じてみた。

5月はYahoo!ブログのほうが、発達障がいと「ニュータイプ」という記事で、なんと90万アクセスまでいってしまった。以降、個人やその特徴の分析というよりは社会の分析に関心が移り、真面目に「階級社会」を論じていく契機ともなった。


厳密には5月末からの事業だが、実質的には6月からこの事業が始まった。
以前から付き合いのあったNPO法人みらいずとの協働というかたちで始めた事業だったが、区の単独事業としては比較的規模が大きく、また初年度は区長の要望から啓発やネットワークに集中した珍しい事業になった。

が、11月のシンポジウムは定員を大きく上回る180名に参加していただき(その様子はここで新しい孤独〜2013年の子ども・若者)、大成功の事業になっているといってもいいと思う。


そして、となりカフェ!! 府立西成高校のとなりカフェとともに、府立桃谷高校では「かめカフェ」というかわいらしい名前の居場所カフェも始まった。
これも、みらいずさんとの協働事業であり、大国町に借りた「aimaカフェ〜あいまカフェ」にも、みらいずやドーナツトークの緊急雇用枠(大阪府事業)で入ったスタッフが元気に働き始めた。

秋になると、Facebookページではあるものの、高校生居場所カフェプロジェクトというページもスタートし、日々の居場所の様子が報告されている。
高校生居場所カフェプロジェクトを整理するというこの記事も参考になる。

■8月 NPOユースカフェ2、wazaカフェ「居場所のイマージュ」が居場所を出たあとも人を支える 

8月は比較的地味ではあったが、「NPOユースカフェ」の2回目と、「wazaカフェ」という新しい試みを行なった。
ユースカフェのほうは京都精華大学の授業内容を凝縮して「権力論」にまとめて語り、wazaカフェのほうは支援技術論を濃密に語ってみた(変な大人は変な待ち方をする)。
NPOユースカフェは最近3回目を行なったが(ソーシャルセクター論)、wazaカフェは早く2回目を開催したいと思っている。

■9月 内閣府と、となりカフェ注目度アップ

9月より、内閣府の仕事が始まった(「困難を有する子ども・若者及び家族への支援に対する支援のあり方に対する調査研究企画分析会議」委員)。
また、国会議員や府会議員が数名ずつ視察に訪れるなど、「となりカフェ」の取り組みが本格的に注目され始めたのもこの月からだった。

また、「階級社会」と自分の仕事を結びつけて考えるようにもなった(「ひきこもりは中・上流階級の問題となるだろう」)。

■10月 「サードプレイス」登場!!(スターバックスと「となりカフェ」

この月から、ブログ上で「サードプレイス」という用語が頻出し始める。
2013年は、僕が15年以上向き合ってきた「居場所」という言葉が「サードプレイス」に置き換わった記念すべき年でもあるのだが、具体的にはこの月より始まった。
サードプレイスは来年もドーナツトーク、いや、日本の子ども・若者問題を考える上で重要概念になると思う。

■11月 住吉区フォーラム、となりカフェ・キャラバン

この月はもうたくさんありすぎて書ききれない。
上にも書いた住吉区フォーラムはこの月だったし、「となりカフェ・キャラバン」(高校生居場所カフェのお試し開催)の打ち合わせもこの月から始まった(開始は1月から)。

詳しくはYahoo!ブログやGoogleブログを参照いただきたいが、個人的に印象に残っているのがこのブログだ(変な大人とは「クィアな人」のこと)。ジェンダー・セクシュアリティと「変な大人」を結びつけて書いたものだが、地味なGoogleブログには珍しく多くの反響があった。
やはり、ジェンダー・セクシュアリティの問題は、多くの人が関心を持っている。

■12月 大阪府の校長部会でも「となりカフェ」を語る

以上、駆け足で今年の「自分新聞」をつくってみたが、ざっと振り返っただけでもどっと疲れた、というくらいに濃密な1年だった。

12月、印象的だったのは、辻田とともに呼んでいただいた「大阪府立人権校長部会全体研修会」での講師の仕事。たくさんの校長先生の前で、「となりカフェ」とサードプレイスについて語ることができたのは、ある種の達成感をいだくことができたのであった。

ブログ的には、この2本。人口構造と階級社会を僕なりに論じることができた。

■ミッション〜戦略への落とし込みを来年も

というわけで、長々「自分新聞」してしまいました、スミマセン。
来年も基本的には今年の戦略(「潜在性へのアプローチ」の2本柱〜①ハイティーン支援としての高校生支援、②潜在エリア支援としての大阪市住吉区支援)を踏襲すると思うが、年末に予定している「ドーナツトーク戦略会議」でより明確になると思う。

このように、ビジョン→ミッション→行動指針→戦略(①法人戦略、②各事業戦略、③人事・財務・広報などの機能別戦略)というソーシャルセクター(厳密には、ソーシャルセクター「ソーシャル・アントレプレナー型社会変革タイプ」)らしい動きを、来年もドーナツトークは追求していきます(ソーシャルセクター分類はこの記事参照ソーシャル・アントレプレナー型社会変革タイプとはなにか)。

みなさま、今年はたいへんお世話になりました、ありがとうございます。
来年もどうぞよろしくお願いします!!★









2013年12月20日金曜日

「ソーシャル・アントレプレナー型社会変革タイプ」とは何か〜「ビジョン→ミッション→戦略」という流れに忠実に


■「行政補完タイプ」に修正

前回、早稲田大学で行なった講義の簡単な報告ブログを書いたが(早稲田大学にサードプレイスを)、そのなかで、あらためて「ソーシャルセクター」について言及してみた。
その作業を通じて、以前から課題だったソーシャルセクター分類(ソーシャルセクターの2分類4タイプ)のうち、「ソーシャル・アントレプレナー型・社会変革タイプ」について、その特徴が明確化できたので、ここに簡単にメモしておく。

その前に、上ソーシャルセクターの分類について少し修正したので訂正・記述しておく。
前回の分類中、「目の前の課題解決型・委託事業タイプ」を「行政補完タイプ」に訂正する。

委託事業は、目の前の課題解決型だろうがソーシャル・アントレプレナー型だろうが利用している。
委託事業を行なう際、以下に記すビジョンほかに則っているかどうかが両者を区別する基準になり、委託事業はそのための手段となる。

言い換えると、ソーシャル・アントレプレナー型のうち社会変革タイプは、委託事業はミッション貫徹のための「手段」にすぎないが、その他のタイプ(目の前の課題解決型2タイプとソーシャル・アントレプレナー型ベンチャータイプ)は「目的」となってしまうということだ。

分類に「委託事業」をもってくるとややこしくなるため、団体存続のために行政事業に依存せざるをえないという意味を込めて「行政補完タイプ」に言い換える。
早稲田での板書を貼り付けてみる。


ソーシャルセクターをビジネス(事業)型とボランタリー型に大別するところから始まる。
また板書中「社会企業家」は「社会起業家」の間違い



■「理念」が苦手で、「戦略」が不要だった国、日本

これまでの課題は、以上のような分類はだいたい終わっていたものの、表中の「ソーシャル・アントレプレナー型・社会変革タイプ」をきちんと定義していなかったことだ。
今回、これをようやく説明できるようになった。ただ、まだ確定ではない。

理想のソーシャルセクターは当然この「ソーシャルアントレプレナー型・社会変革タイプ」だ。
このタイプの特徴は、「ビジョン→ミッション→行動指針→戦略」という教科書的企業づくりに則っているかどうか、という単純な指標に行き着く。

ビジョン(どういう社会にしたいか)、ミッション(そのための理念)、行動指針(ミッションの補足・下位概念)、戦略(法人戦略→各事業戦略→機能別〈人事・広報・企画等〉戦略)という流れは、どの企業・団体・ソーシャルセクターもできているかといえばそうではなさそうだ。

理念が苦手で、歴史的に「戦略」が不要だった(ヨーロッパ・中国のように恒常的に戦争がない〜内戦では100年程度の戦国時代、対外戦争では明治後半以降の50年ほど)日本においては、そのような慣習が各組織にないとよくいわれる。

グローバリゼーションの時代になり、大企業やグローバル企業中心に、「ミッションと戦略」をコンサル会社の手を借りて強引に導入しているようだが、それは企業内の英語使用といった相変わらずの「小手先」というか小器用な手法のみ注目され、「ブレない理念と、数年単位の戦略」という発想は根付くのにはまだ時間を要するだろう(対外的に隠蔽する悪習もある)。

各「現場」の各々の「技法」がものすごく好きな国民性を日々観察していると、ミッションと戦略には程遠いと僕は毎日実感するのだが、いかがだろうか。

■「おいしく」ても行なわない

が、そんな我が国ではあるものの、ソーシャルセクターの仕事をきちんと貫徹しようとすると、おのずと「ビジョン→ミッション→行動指針(この前後に「アイデンティティ」を入れる場合もあるという)→戦略」という流れに忠実であることが求められる。

自分の団体にとって、どのような社会が理想か(ビジョン)、その社会を実現するためにどのような理念が必要か(ミッション)、そのミッションを補足するためにどのような概念が必要か(行動指針)、そのためにどのような戦略が組織内の各レベル(法人・事業・機能別)で必要かを、組織の中心メンバーが常に創設・確認していく。

そしてこれに則った行動を現実化する。
ここからはみ出るような事業は、多少それが「おいしく」ても(予算が膨大であっても)、行なわない。

この「行なわない」という決断は、案外難しい。特に、社会問題の解決にお金(予算)が動くようになり、そのために官僚の方が必死に企画するようになると、どうしてもその予算規模や官僚の熱情に動かされてしまう。

ビジョン・ミッション・行動指針・戦略からブレない、ということだけを守ることが、同語反復ではあるが、そのビジョンにより近づくことになる。
こうした団体が、規模の大小にかかわらず、つまりは「ソーシャル・アントレプレナー型・社会変革タイプ」だ。
ドーナツトークも当然ここを目指したい。

下に早稲田の板書を貼りつけておく。★














2013年12月17日火曜日

早稲田大学にサードプレイスを!!


■ミッションや戦略話で熱い授業

縁あって、早稲田大学教育学部の小林敦子教授からご依頼を受け、12/16夜と12/17朝、2つの授業の特別講師みたいなかたちで早稲田の院生・学生相手に講師をしてきた。


小林敦子先生(右)と僕 12/16授業で


12/16は院生と一般学生対象の講演(のようなもの)、12/17は学部2回生対象の授業だった。
12/16は、ひきこもり・ニート支援や高校生居場所カフェ(となりカフェ)プロジェクトの解説と「サードプレイス」の説明を中心に、12/17は、ソーシャルセクター分類とミッション・戦略などの解説を中心に行なった。


12/17の朝の授業では、朝イチということもあって最初は僕も学生のみなさんもテンション低めだったものの、ソーシャルセクターの解説あたりから学生のみなさんが聞き始め、ビジョン・ミッション・行動指針・戦略あたりになると、40人くらいの学生さんが文字通り目を開いて聞いていた。

後から聞くと、講義対象の2回生はサークル運営の主体であり、授業後のアンケートにも、ミッション等の考え方は「組織運営」に使えるということで関心をもったと書かれていた。

確かにミッションや戦略の話は何もソーシャルセクター限定ではなく、当然企業やその他団体運営にも活かせるだろう。
経営とは「戦略と組織」でもあるから、その上部概念であるビジョンからの落とし込みも含めて体系的に組織運営を行なっていくと(ビジョン→ミッション→行動指針→戦略〈①法人戦略、②事業戦略、③機能別戦略〉)、ブレがなくなる。

日本の場合、歴史的に戦争がなかったことから、戦略思考が苦手だとよく言われ、確かにソーシャルセクターの経営においても、各事業内の「財務(というか会計事務)と人事」を行なうことが経営であると勘違いしている方も多いと思う。

僕がこの3年間独学で学んできた範囲では、経営とはまずは「ビジョンとミッション」であり、それに基づいた「戦略」のことを指すと思う。各事業の人の配置や会計手法等は、重要ではあるものの経営の落とし込みの最終段階で訪れるものだ。


久しぶりにチョークで板書
「ビジョン、ミッション、行動指針、戦略」という流れ 12/17授業


そうしないと、「目の前の課題」の解決にしゃかりきになるか、「ベンチャー」的に流行りに乗っていくかになってしまうだろう(だからこの記事ソーシャルセクターの2分類4タイプで書いたように、「目の前の課題解決型NPO」や「ソーシャル・アントレプレナー型ベンチャータイプNPO」が出現する)。

このようなことを2回生相手についつい熱く語ったのだが、僕よりも熱い感じで学生さんたちは聞いてくれ、授業後も何人かの方が声をかけてくれた。
アンケートでは、サークル運営に加えて、そもそもソーシャルセクターや起業に関心ある学生さんたちもおり、さすが早稲田、というか、テーマを厳選すると今の学生さんたちは僕が学生だった頃よりも遥かに熱心に聞いてくれるのだと思った(それは今年前半、京都精華大学で非常勤講師を務めた時も痛感した)。

■「雀荘」もサードプレイス

その前夜、12/16の院生相手の授業では、「サードプレイス」について語ってみた。
これも院生のみなさんの反応はよく(アジアからの留学生が半数を占めていたということも影響しただろう)、それぞれの「サードプレイス」観についておもろしい議論ができたと思う。

ある院生の方は、「早稲田周辺には雀荘が著しく減った」と嘆いていた。
そう、よく考えると、麻雀というゲームを共通項に人々が集っていた「雀荘」も立派なサードプレイスなのだ。
オルデンバーグの『サードプレイス』(みすず書房)では、会話に加えて「カードゲーム」もサードプレイスで行なう重用な要素と明記されている。

人との交流のないテレビゲームはサードプレイスでは不要だ。対して、トランプに代表されるカードゲームはサードプレイスの重要要素だ(僕は特に「大富豪」がお薦め)。
同じように、麻雀も重用だろう。ただし麻雀もトランプも、ギャンブル要素が過度に加わると、それはサードプレイスというよりは「裏セカンドプレイス」(仕事のようなもの)になるかもしれないが。

すべての授業が終了した後、小林先生には「早稲田大学にサードプレイスをつくってください」とお願いした。
大学中退問題への対応は、私大の雄である早稲田に「サードプレイス」的居場所を設置し、中退予備軍学生に対してサービス提供することが大事なのではないかと僕は考える。

学生相談室でのカウンセリングや経営サイドからの授業メニュー改革と同時に、「サードプレイス」創設がかなりの効果が見込まれるように思える。
それをまずは早稲田からつくってみてはと思うのだが、どうだろう。

早稲田はあまり中退しないのかな。いやいや、あれだけのマンモス校になると中退数も多いはずだ。
大学中退は、困難校中心に「となりカフェ」等のサードプレイスを配置する高校中退と違い、早稲田等の「コア大学」から見本を提示することが大事なのではないか。

一泊二日の早稲田講師で以上のようなことを考えた。小林先生、がんばってください、まずは早稲田の教育学部からサードプレイスを!!★



2013年12月13日金曜日

ソーシャルセクターの2分類4タイプ〜目の前の課題解決型とソーシャル・アントレプレナー型


 ①目の前の課題解決型と②ソーシャル・アントレプレナー型

これまで僕は、NPOをはじめとした「ソーシャルセクター」(「社会貢献」を前提としている法人……NPO以外に一般社団法人・株式会社・社会福祉法人等)をいくつかの種類に分類してきた。
それは、このブログ(ソーシャルセクターの分類)や下記のYouTube動画で提示してきた(内容的には再掲だが、とりあえずPart1を添付する。このブログ後半にはPart2もあるhttp://toroo4ever.blogspot.jp/2013/11/blog-post.html)。



その後いろいろ考えてきた結果、結局、ソーシャルセクターを下記の2分類4タイプに分けるのがいちばんわかりやすいと思い始めたので、これを決定版としてみる。

まず、ソーシャルセクターを以下の2分類に分ける。それは、

①目の前の課題解決型
②ソーシャル・アントレプレナー型

となる。
ソーシャル・アントレプレナーとは「社会起業家」のこと。ここではあえてカタカナにしている。
このようにおおまかに2つに分け、これらをさらに2つずつに分けていく。それは、


①目の前の課題解決型
 (1)委託事業タイプ行政補完タイプ
 (2)自主事業タイプ

②ソーシャル・アントレプレナー型
 (1)ベンチャータイプ
 (2)社会変革タイプ

となる。大きく、目の前の課題解決型とソーシャル・アントレプレナーの2つの分類ができ、目の前の課題解決型に委託事業タイプと自主事業タイプ、ソーシャル・アントレプレナー型にベンチャータイプと社会変革タイプがぶらさがる。

■「マネジメントより現場」


①はそれほど説明不要だろう。社会問題に向き合う任意団体は、目の前に大きな課題を抱え、向き合う理由を持っている(ひきこもり問題の解決等)。
そのためにまずは自主事業を立ち上げるが、この10年ばかりは行政の委託事業も広がり、周囲のすすめに応じてそうした委託事業も始める。

そうすると事業規模が拡大し、自主事業だけではフォローしきれなかった多くの課題と向き合うことができる。
が、同時に、対象や課題が拡大してしまい、またスタッフも多く抱えることから、当初の目的が分散し始める。

それは、a.対象の拡大化(当初の目の前の課題が拡大分散化)、b.それらをこなすために急場しのぎのスタッフ雇用という、2つのパターンで説明できる。
急拡大したソーシャルセクターは、マネジメント(主として戦略と組織)が超後手になっていき、組織内で不平不満が生じる。

一方、委託事業に頼らない法人は、a.事業規模の未発展と、b.対象者が「アッパークラス」の社会階層(自主事業の料金が支払える顧客層)に限られるという事態に悩まされる。
要するに、(1)委託事業と(2)自主事業を戦略的に混合させることが求められるのだが、いずれも日々の業務に追われてマネジメントを整えることのできないまま時間ばかりが過ぎていく。

マネジメント機能がこの①目の前の課題解決型は弱い、ということも特徴だろう。
目の前の課題解決に奔走しているうち、マネジメントが後回しになるというのもあるが、組織運営のなかで「マネジメント」が軽視されている日本の風土も関係すると思う。
また、ソーシャルセクターに入ってくる人材は、「マネジメントより現場」という人が多い、というのもその原因だろう。

■ほとんどがベンチャータイプ?

②ソーシャル・アントレプレナー型のほとんどは、(1)のベンチャータイプではないか、というのが今のところの僕の感想だ。

ちなみに、日本のNPOの8割は、ソーシャルセクターではない、ボランタリーセクターだといわれる。
残った2割がソーシャルセクター(社会貢献がビジネス化できているということ)だが、どうだろう、この2割のなかの6〜7割は①目の前の課題解決型で、残った3〜4割がこのソーシャル・アントレプレナー型ではないか。

つまり、ソーシャル・アントレプレナー型は、全NPOの1割も満たないと思う(8割がボランタリーセクターで、残った 2割中の半分以上が目の前の課題解決型)。
その10%に満たないソーシャル・アントレプレナー型のうち、ほとんどがこの「ベンチャータイプ」だと僕は見ている。

ソーシャル・アントレプレナー型ベンチャータイプは、15年前のITブーム時に起業していれば、「ソーシャル」はつかずに、ただの「アントレプレナー」だったということだ。
第二第三の楽天(ほどとは言わないがそれなりの規模の企業)になれた団体も、今のソーシャル・アントレプレナー型ベンチャータイプにはたくさんいると思われる。

それだけ優秀な人材がここには含まれると僕は思っている。これは、団塊ジュニア以降の世代に多く見られる。

■システムそのものの返還を迫る〜社会変革タイプ

では、②(2)ソーシャル・アントレプレナー型社会変革タイプと、②(1)のベンチャータイプはどう違うのだろうか。

それは一言、「法人の中核スタッフが、『社会問題を構造的に変革することで、今よりよい社会システムとなる』ということを語れるかどうか」につきると僕は考える。

この時の「社会問題の変革」とは、福祉的に「社会問題をフォローする」という意味ではなく(具体例はあまり書けないが、たとえば雇用システムそのものを変革するのではなくて、現行の雇用システムを変革することなく新アイデアで補っていくといったこと)、人口構成や社会階層構造等を射程に入れてシステムそのものの変換を迫る事業提案を行なうことだ。

こうしたシステムの根本変換から社会変革を目指し、そうしたことをシンプルに中核スタッフが語れるかどうか、このことが(1)のベンチャータイプと(2)の社会変革タイプを分ける基準だと考える。
(1)ベンチャータイプは、こうしたことを語るのが(書くのが)苦手だったりする(が、マネジメントは非常に上手)。

そういうと大げさだが、たとえば、「サードプレイス」の現実提案などはこの社会変革に当たると僕は思っている。
だから「となりカフェ」は新しい。★










2013年12月4日水曜日

サポステ、「サバイバー」を支援する矛盾


■「山場」

タイトルの「サバイバー」とは、虐待やPTSDからの生還者・回復者のことではなく、単に高校中退という一つの関門をくぐり抜けた高校生たちのことを指す。

困難校を中心に、現在、高校生には高校中退という壁が待っている。それは通常の高校では1年生の1学期後半から2学期後半にかけて訪れるという。
高校によっては(2部制等)2年生後半に「山場」があるそうだが、通常の全日制では1年生の早いうちに中退の壁が立ちふさがる。

中退の原因は挙げだしたらきりがなく、また、このブログ記事(新しい孤独〜2013年の子ども若者)で書いたように、階級社会化の中での子ども若者問題の「単独化(これまでのように共通した問題として10代の悩みを語れない)」現象から、なかなか中退の原因を一言で表現することが難しい。

階級社会化が原因の根底にあるのは確かなものの、その原因をたとえば生徒や保護者に集約することなどはとてもできない。
保護者も子どもも、みな懸命に生きている。生きている中で種々の問題が生じてくるが、それを責めることは僕にはとてもできない。

ただ事実として、高校1年の夏前から冬前にかけて、高校中退という壁が多くの生徒達に立ちふさがっている(それをくぐり抜けたものをここでは「サバイバー」と呼ぼう)。

■元気な層を焦点化

それを食い止める、あるいは食い止めることができない場合は「よりよい中退」の道を探るのが、「地域若者サポートステーション」の大きな仕事のはずだ。
が、現在、サポステのこれからのかたちは、いろいろな話を総合して考えると、逆の方向に向かっているように思える。

それは、ひきこもり・ニート層の中でも比較的元気な層に焦点を当て、その層を手厚くフォローして一人でも多く就労させるという道だ。

その比較的元気な層を、「準フリーター」と呼んでもいいし「レイブル(レイトブルーマー)」と呼んでもいい。キャリアカウンセリングや就労実習を経て、短期間で就労(多くはアルバイトだろう)の道を歩める層が実際に存在する。

そのこと自体は喜ばしく、その層が着実に社会参加していくことを願う。
ただ、そうした準フリーター層を焦点化することで、社会参加に時間がかかる層、つまりはニート・ひきこもりの大多数が「潜在化」してしまうという問題がある。

若者の労働資源化を急ぐ政策立案者サイドからすると、このように準フリーター層に絞り込んで支援し、その層に税金と社会保険を支払ってもらうという方針は、まったく正しい。
僕が国の政策立案サイドにいるとすれば、おそらくこの立場を選ぶだろう。

しかし僕は、潜在層を支援する立場のため、準フリーターに絞り込んだ就労支援のみが拡大されることは困る。

■中退の「サバイバー」を支援する矛盾


これからの地域若者サポートステーションは、この準フリーターをメインターゲットとしてサービス提供する方針に変わるかもしれない、とチラホラ聞いたりする。

せっかく今年度、予算を1000万円増加し、その増加した分を学校連携(主として高校連携)に回すことができるようになったというのに、その増加分を、これからは「就労」に絞り込んで支援サービス(セミナー等)を提供していくそうだ(僕はサポステ外部の者なので間違ってたらスミマセン)。

就労に絞り込んだサービスということは、つまりは、高校中退という壁を乗り越えた生徒が主たる対象(3年生、あるいは中退可能性のない生徒を幅広く)ということだ。
高校中退という壁を乗り越えたんだからさらにフリーター化は防ごう、できれば就職・進学しようという支援がこれからのサポステの中心になるとすると、また「潜在化」の問題がひとつ増えることになる。

上述のように、困難な高校生の最大の問題は、1年生時の高校中退の問題だ。が、これからのサポステは、高校中退の問題ではなく、高校中退という山場を乗り切った(つまりは、中退の「サバイバー」になった)生徒の、就労の問題を中心に扱うかもしれない。

サバイバーになるよう(あるいは行き当たりばったりではない中退を選ぶよう)生徒を支援するのではなく、そうした困難な支援のあとの、サバイバーになった、いちばん厳しい局面を切り抜けた生徒を支援する学校連携支援。
現実のサポステが、僕の懸念が懸念で終わり、予想する矛盾に陥らないよう願います。★