ジョンの魂

今日、京都精華大学での今期の授業が終わった。

最後は、学生のみなさんから集まった質問に対して一つひとつ答えていったのだが、そのなかのひとつに「先生はこれまでどんな音楽に影響を受けましたか」というものがあった。

僕はずっとロックファンであり、これからも(新作はたぶん聞かないが)ロックファンだ。
生きれば生きるほど、僕にとって最もたいせつだったのは哲学でも文学でもなく、ロックだったと思い始めた。

で今日、学生さんからあらためて質問を受けた時、ぐっと考えて浮かんできたのは、ジョンレノンの「ジョンの魂」だった。

「ジョンの魂」の1曲目、「マザー」を初めて聞いた時の衝撃をいまだに忘れることはできない。
荘厳な鐘の音が何度か繰り返され、イントロも何もないジョンレノンの「マザー」の叫びが届く。

その鐘が終わる瞬間と、ジョンレノンが「マザー」と叫ぶときが重なる瞬間、あまりの衝撃に15才(16才だったかな)の僕は椅子から飛び上がった。

そこから僕の「ロック」が始まったのかな。

その頃の感覚(のすべて)は、大人になれば忘れてしまう。集団内での違和感、まわりの人々の発する言葉と雰囲気への反発、最も気を許す弟にさえ気を許せない寂しさ、誰かを求めながらも誰も求めていない寂寥感、一言でいえば「ひきこもり」感覚なのだが、僕はやはり孤独だった。

その孤独感に寄り添ってくれたのが「マザー」の叫びだった。

精華大学で語ったのは、できるだけ今の気持ちを覚えておこうということであり、その気持を忘れないと「大人」にはなれないといことであり、その両者が共存するのが「変な大人」ということだった。★